海外旅行のお土産

初めてプレゼントをもらってから。
ブランドのお財布を持つようになってから。
“自分磨き”。
始めました。
メイクの講座を受け、スカート丈を少し短くし、髪の毛にも気を使うようになりました。

それの効果があったかどうかはわかりませんが、コンパに行ってそれなりの扱いを受けるようになりました。
そして。
就職。
今まで、派遣に登録して、良い仕事がなければバイトでつないだりしていて、今考えると、自分にとって楽な道を選んでいたような気がする。
ハローワークに登録し、求人広告にも目を通し、そして面接。
不思議と、自分に自信が持てるようになると、今まで怖かった面接も楽しめるようになりました。
その結果、受付事務として採用が決まったのです。
新しい会社での仕事は、それなりに忙しく、でもほとんど残業もない。
ちゃんと就職して良かった、と今しみじみ思います。

で。
その会社で知り合った彼。
いつも爽やかに、たまにおやつに、と手土産まで持ってきてくれる。
そんな彼にデートに誘われた。
何回か会社外で会ったけれど、なかなかお付き合いするまでには至らない。
そんなとき、彼が有給を使って友達何人かで海外旅行へ行くのだと聞いたのです。
羨ましい。
わたしももう少し貯金がたまったら、友達誘って海外に行ってみたいと思う。

彼がいなくても、別に付き合っていたわけではないので寂しくはありませんでした。
けれど。
会社のお局さん的な存在の先輩が教えてくれたのです。
彼に気をつけて、と。
去年、彼とお付き合いしていた女性が、結婚のうわさが出たと同時に捨てられ、会社まで退職してしまったのだとか。
他の会社の女性にも同時に手を出していたのだとか、もういろいろ教えてくれたのです。
そう言えば、一緒にいるときも、しょっちゅうメールを受信していたよな。
思い当たるふしもたくさんある。
彼の顔を見なかった1週間で、すっかりわたしの気持ちも冷めてしまったのです。

それから、会社に顔を出した彼。
週末に映画に誘われたので、迷いましたが、ちょうど見たい映画だったので、とりあえず行ってみることにしたのです。

待ち合わせてすぐ映画館へ。
見たかった映画は予告を見たときの期待通り、面白いものでした。
で、そのあと遅めのランチへ。
焼き立てパンの好きなわたしのために、最近できたパン食べ放題のお店をチョイスしてくれていたようです。
予約を入れてくれていたのでスムーズに席へ案内されました。
焼き立てのパンって、本当においしい♪
デザートを待っている間、彼が差し出した紙袋。
中に入っていたのは、COACHのコンパクトなバッグ。
あっ。
またブランドもの?
そして、彼からお付き合いの申し込み。
なんとなく、もう答えを予想しているような勝ち誇った顔に見えた。
もし、これが、彼の海外旅行の前なら、顔を赤らめてOKしていたかもしれない。
けれど。
お局さまから、いろいろ聞いてしまったわたしの答えはNO。
バックももったいないけれど、お返ししますと紙袋を彼に返した。
ところが彼は、お土産はお土産だから、要らなかったら誰かにあげてもいいよ、と。
それから、気まずい雰囲気でデザートをいただき、気まずい雰囲気のままお店を後にして、別々の道へ。
ごめんなさい。

週明けに会社に彼が来たが、わたしは普通に接していたが、彼はどこか冷たい対応。
大人げないなぁ。
そのあとすぐに、彼から彼女ができたと報告されたけれど、もうどうでも良い。

軽い男につかまらなくて、ほんとうによかったよ。


そして、週末だったので、またそのまま出かけてしまい、紙袋の存在を忘れてしまっていたのです。